天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

父を詠む(10/10)

  馬捨場と呼ばるる土地に分家され父は貧しく馬もてざりき
                      高貝次郎
*馬捨場: 明治以後に廃馬を処理する方法として馬の肉を食する習慣始まった。それまでは,死馬は皮を太鼓などに利用するにとどまり,多くは村落の外縁に設けた馬捨場に遺棄して野獣の食にまかせた。(百科事典から)

  線香の香は好まぬと言ひし父雪の夜ひとり出でゆきしまま
                      熊岡悠子
  母逝きし日より田植唄失いしわが父なりき 苗代田は凍つ
                      菅原朝子
  父死なば赤飯を炊けと言い捨てて風呂場に顔を幾度も洗う
                      新川克之
  とめどなくさくら散る夜の夢にきて父が碁石の黒びしと打つ
                     岩花キミ代
  戻り来しキャラバン隊のしんがりラクダの背(せな)に父見当たらず
                      若菜邦彦
  忘れられゆく寒林の置き手紙こんなにも父は閑(しづ)かに消えし
                    北久保まりこ    

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