彫刻を詠む(1/2)
彫刻は、さまざまの材料(木,石,金属,粘土,象牙,蝋,石膏、アルミニウム,プラスチック,ガラスなど)に図像を三次元的に表現する美術。狭義には、石や木のような素材を彫り込んで形象を作る場合をさす。粘土や石膏のように次第に肉づけして作る場合を彫塑と呼ぶ。
大いなるロダンは手のみ彫りたれど生き生きとして全体を見す
岡山 巌
鑑真の彫像をめぐりつつ思ふ母の遠きを国の遠きを
鹿児島寿蔵
能面の泥眼(でいがん)がもつ翳(かげり)見きしみじみとせる嫉みをせむか
生方たつゑ
*泥眼: 能の女面の一つ。眼に金泥を塗り、女性の生霊の面として嫉妬に狂った美しい女を表わす。
木彫の伎楽の面は頬(ほ)の肥えてその獅子鼻も愛(かな)しかりける
木俣 修
*伎楽の面: 伎楽(推古20(612)年に百済の渡来人が,呉で学んだ伎楽を大和国の桜井で少年を集めて習わせた。)に用いた仮面。舞楽面・能面よりも大きい。正倉院・法隆寺・東大寺などに現存。
大き鼻空ざまにしてあぐらゐる伎楽の面は呵々とゑらげる
太田青丘
剛き魂(たま)ひめておはすをまむかふは優しみ堂の西行の像
窪田章一郎
ジャコモ・マンズーの枢機卿のマントの裾拡がりの無限の世界
加藤克己
*ジャコモ・マンズー: イタリアのベルガモ出身。現代具象派を代表する彫刻家。バチカンにあるサン・ピエトロ大聖堂の扉の彫刻を制作した事でも有名。1991年83歳で逝去。
うつうつと逢いし未来を思うとき君に似て清しグレコ・ロマンの像
吉田 漱