天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

絵画を詠む(6/6)

  絵を買つて絵を売つて暮らしのたつ話縁なき事は何にても楽し

                        清水房雄

  虹のごとよみがへりくる画のなかに妹が姉の乳首をつまむ

                        日高尭子

  みづからの呼び醒ましたる潮ざゐにゆれ出す壁画のなかの破船も

                        大西民子

*「潮ざゐ」は、作者の過去の記憶の暗喩であろう。思い出せば心がさわだつ記憶なのだ。

 

  画の魚のむきむきにして遊べる中のひとつの暗く沈みゆく

                        高橋則子

  表情をもどすことなき絵のなかのふりむきざまといふ心の無

                        今野寿美

  絵の中に踊る男は左足あげつつ四百年またたくまなり

                       佐佐木幸綱

*四百年前に描かれた絵を見ての感想。

 

  自画像を書き損じたる紙の上にわれは子と食う菓子を分けおり

                        浜田康敬

 

f:id:amanokakeru:20201211061537j:plain

破船 (WEBから)