天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

思想(2/5)

  文字の羅列は思想でないとおもふとき明快な思想のうしろ姿をみた

                     西村陽吉

*「明快な思想」は、文字の羅列から得られるものではない、という悟り。

 

  いくつかの思想うづまく中にゐて身じろぎならぬ齢至りぬ

                     吉田正俊

  徒らに勉むる者をかろしめて如何なる思想にも疑ひ持ちき

                     吉田正俊

*かろしめる: (軽しめる)軽くみる。あなどる。見下げる。

 

  天空(てんくう)に炎えさかる太陽暗紅の芯部に思想凝結せんか

                     加藤克己

  血の意識加はりしより速やかに一国を統べし虚無の思想あり

                     小野茂

*「血の意識」とは人種の意識のことだろう。ヒットラーの時代が一例。

 

  蝶とまる木の墓をわが背丈越ゆ父の思想も超えつつあらん

                     寺山修司

  閉ざされてゆく思想もつ風のなか砂に埋もれず白き棚あり

                     片岡 明

 

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