天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

高木東六と軍歌

 先日、作曲家の高木東六が、102歳で亡くなったというニュースを見た。とうに故人だと思っていたので、びっくりした。また、この名を聞いて思い出したのは、靖国神社参道右手売店の傍にある小さな桜の木である。彼の作曲した「空の神兵」の歌詞が懸かっている。根方に金属板がおいてあるが、そこには
    空挺桜
     ”花の都の靖国神社
      庭の梢で咲いて会およ”
    平成元年四月八日
    陸軍落下傘部隊戦友一同
とある。桜の枝に懸かる板には、梅木三郎作詞、高木東六作曲による「空の神兵」の一、二番の歌詞が書かれている。即ち、

   1.藍より蒼き大空に 大空に
     たちまち開く 百千の
     真白き薔薇の花模様
     見よ落下傘 空に降り
     見よ落下傘 空を征く
     見よ落下傘 空を征く
   2.世紀の華よ落下傘
     その純白に 赤き血を
     捧げて悔いぬ奇襲隊
     この青空も 敵の空
     この山河も 敵の陣
     この山河も 敵の陣

 レコード会社の人が持ってきた梅木三郎の歌詞を読んだ瞬間、高木の頭にさわやかなイメージが広がったという。簡明、直裁、且つ美しいイメージは、これまでの軍歌にはなかったもので、彼の曲想そのもので書く事ができたから、十五分くらいで出来上がったらしい。

 この歌詞の掛かった桜は、残念ながら大きくはならず細々として、半分立ち枯れている。


  幾人が梢に咲きて会ひにけむ半身不随の空挺桜