天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

花狂い(続)

柏尾川の桜並木

 鎌倉はどこも花見客で込み合っていた。というとあらゆるところを見てきたのか、と問われそうだが、今日歩いたのは、寿福寺から入って裏山経由源氏山公園を横切り、葛原岡神社から浄智寺へ抜けるルートである。山桜はおおかた散っていたが、ソメイヨシノはまだ莟であった。街中では満開にちかいので、なんだか不思議である。このルートは、一時間あれば歩ける。
 午後からは短歌人の横浜歌会。戸塚を流れる柏尾川沿いの路傍には桜並木があり、今が見頃である。近所の人達が大勢出てきて、川原にまでシートを敷いて宴会していた。
歌会の報告は、別途「短歌人」誌に投稿するが、わが詠草だけについてコメントしておく。今回の題詠は「嘘」、そして自由詠。


  八百長嘘八百も身近にて減量せんと青りんご食ぶ
  *出席者の意見では、下句と上句の関係がわからない、という
   ことであった。作者としては、三句目につなぎを入れたつもり。
   減量のために青りんごを食べているが、これも実はテレビ番組
   の嘘を信じてしまった結果である、といいたかった。


  新たなる決意伝へむ髪型に注文多き茶髪のをぢん
  *上句があいまいで分かりにくい、との意見。連作の中の一首だと
   面白くなる、とも。理髪店における実景で、今度四月から職場が
   変わるので、そこで新たな決意を職場の皆に伝えられる髪型に
   してほしい、と客は注文をつけたのである。床屋は、では、
   サラリーマンのようにきっちり髪を分けましょう、と提案する
   のだが、客は現在のぼさぼさの茶髪にも未練があるらしく、
   かっこよくしてくれと注文をつけているのだ。


      遊行寺は花の下なる蚤の市
      門前は匠の市や山笑ふ
      頼朝の銅像も入れ花の宴
      桜ちる夜は孤独な闇の中