青鷺(1)
北鎌倉の円覚寺では、毎年、十一月一、二、三日に、宝物の風入と称して、所蔵の書画骨董を展示し、舎利殿内部を公開する。今年も大勢の観光客が訪れていた。以前に幾度か見ているので、今回はいつものように境内を散策するにとどめた。舎利殿門前横の池の縁に人だかりがしているので、よく見たら大きな青鷺がじっと立っているのであった。まるで彫像のように動かない。人々はそのことにも驚いていた。実はこの日、短歌人・横浜歌会があり、柏尾川を渡ったのだが、そこでも青鷺を見かけた。
床の上に山茶花活けて弓をひく白足袋しまし微動だにせず
ぬばたまの黒髪束ね弓を引く 山茶花ゆれて的外れたり
置物とみまがふばかり動かざり水面見つむる一羽青鷺
口にあまる鯉ばかりなる池の辺に青鷺は佇つ塑像のごとし
餌をまちて人の辺に寄る鯉のむれ 青鷺ぢつと見つめてゐたり
一瞬を青鷺翔ちて鯉群るる水面かすめし舎利殿の朝
宝物の風入なれば開放す人のつどへる舎利殿の庭
漱石の鬱を癒せし禅林の庭に咲きたる一鉢の石蕗
参道に手作りの品ならべ売る北鎌倉の匠の市は