石楠花
シャクナゲはツツジ科ツツジ属の常緑低木だが、園芸種も多く、500種以上あるという。百科事典によると、シャクナゲ類はヒマラヤ南部、インド北部、ネパール、ミャンマー、中国の雲南省、四川省、チベットなどの山岳地帯に生まれ、周辺にひろがった大グループである。アズマシャクナゲとかホンシャクナゲとかあるが、日本古来の花ではなさそう。万葉集には出てこない。漢字の「石南花」は中国産の別種という。つまり当て字。石楠花を詠んだ先人の俳句と短歌の例を次にあげておく。
石楠花や朝の大気は高嶺より 渡辺水巴
石楠花や水櫛あてて髪しなふ 野沢節子
石楠の花にしまらく照れる日は向うの谷に入りにけるかな
島木赤彦
石楠は木曾奥谷ににほへどもそのくれなゐを人見つらむか
斉藤茂吉
小田原の箱根板橋には、明治から昭和にかけての政治家や財界人の別荘や邸宅があった。古稀庵(山縣有朋)、山月(男爵大倉喜八郎)、老欅荘(松永安左エ門)など。老欅荘の庭には、大木のセイヨウシャクナゲが咲いていた。今まで見ていた石楠花は、草花に近いイメージだったのだが、老欅荘のものは、まさしく樹であったので吃驚。ヨーロッパで世界各地のシャクナゲを交配して作り出された園芸品種のひとつとのこと。
石楠花や腰に腕巻く石の階
藤棚や尺八吹ける若き僧
樹齢四百年の欅の若葉かな
初つばめ箱根板橋老欅荘
空をゆく雲かがやける五月かな
政治家の手腕といへばをさまりぬ古稀庵、無隣庵、椿山荘あり
財力の出所知らず政治家がをちこちに持つ別荘の数
山荘に黒部の大岩運ばせて茶をたしなめり電力王は