天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

山鉾の句

オオケタデ

 「古志」9月号の長谷川櫂主宰巻頭は、「祗園会」と題する作品である。周知のように祗園会は、京都八坂神社の祭礼で、七月十七日から二十四日までが、山鉾巡行などのクライマックスになる。主宰は今年も見に行かれたらしい。全15句のうち13句が山鉾巡行を詠んだものであり、相当に力が入っている。そのためか、主題がややわかりにくいが、どうやら大和の国を寿ぐことにあるらしい。次のような句にそれが感じられる。


      大水も地震もものかは鉾すすむ
      鉾建つや諸国の美田青々と
      雲の中ぬつと長刀鉾はあり
      三日月を花とかかげて鉾すすむ


 七月に大水や地震が発生したが、それは京都市内のことではない。また、諸国の美田が青々としている情景は、作者の心の中にあるもの。雲の上に鉾先が出ているとは、出雲神話にでもありそうなこと。まさに国誉めである。三日月を花とかかげて、とまでいわれるとずいぶん力が入っているなあ、と思ってしまう。ただ、祗園祭を詠んだ先人の有名な句がいくつもあるので、力がはいるのは当然か。