天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

かやの木

伝肇寺にて

 北原白秋が伝肇寺の境内に建てた山荘で作詞した「かやの木山(の)」は、次のようなものである。


     かやの木山の
     かやの実は
     いつかこぼれて
     ひろわれて
     山家のお婆さは
     いろりばた
     粗朶(そだ)たき
     柴たき 灯りつけ
     かやの実かやの実
     それはぜた
   
     今夜も雨だろ
     もう寝よよ
     お猿がなくだで
     はよう寝よ


 かやは漢字で、榧と書く。イチイ科の常緑高木。四月頃に開花、楕円形の緑紫の実を結び、翌年の秋に熟す。種子は食べられる。


  秋はやく木の実の落つる親しさをもちて来にけり榧の樹のもと
                        山口茂吉
  榧の大木春のすがしき香の下に熱あるわが身しづかならしむ
                        佐藤佐太郎
  松の芽に似たる匂ひのうらぐはし草よりひろふいくつ榧の実
                        後藤直