かもめ
カモメ科の鳥。都鳥、白鴎、背黒鴎、ゆりかもめ。万葉集には一首だけだが、「かまめ」と出てくる次の有名な長歌がある。俳句で都鳥(傍題として、ゆりかもめ)は冬の季語。
大和には 群山あれど とりよろふ
天の香具山 登り立ち 国見をすれば
国原は 煙立つ立つ 海原は
鴎立つ立つ うまし国ぞ 大和の国は
おぼつかな都にすまぬ都鳥こととふ人にいかがこたへし
新古今集・宣秋門院丹後
夕なぎに波こそみえね遥々と沖の鴎の立居のみして
吉田兼好
鴎らがいだける趾(あし)の紅色に恥(やさ)しきことを吾は
思へる 近藤芳美
河口へと押しゆく水に乗るかもめ委ねきりたる浮き身ちひさし
蒔田さくら子
餌を撒くわが掌と知りて集ひくるいづれ破天の野のゆりかもめ
安永蕗子
女優にもなれざりしかば冬沼にかもめ撃たるる音聴きてをり
寺山修司