天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

巣鴨プリズンを思う(2)

巣鴨プリズン跡地

 徳富蘇峰に代表されるマスコミの論調、それに扇動される一般国民、武力権力に頼る軍部、会議を開いて意見を集約するしかない首相、意見は言うが会議の結論に従わざるを得ない天皇明治憲法で決まっていた統帥権という異様なシステム、帝国主義植民地主義の時代風潮 などが絡み合って勝ち目のない絶望的な戦争に突っ込んでいった。君臨すれど統治せずという天皇に軍隊が直結するという憲法で正当化された体制、まさに神話時代のような体制。戦争を回避できるわけがなかった。
 自分をその立場においた時、やはり趨勢を変えるだけの力はなかっただろう。当時の誰をも非難する資格はないと痛感した。ただ、誰彼に嫌悪感を抱くのみ。
これは、現在の世界不況に対応している政治家、マスコミ、評論家、一般国民を考える良い材料になる。国民と国家の将来のために、政権争いを捨てて大道につこうという政治家なりマスコミ主導者が現れないのが、なんとも哀しい。反対するだけケチをつけるだけ、では国が乱れる。智恵を出し合って事に当るという柔軟性がなんとしてもほしい。
 A級戦犯が処刑された場所に立って見たく、池袋のサンシャインビル横の東池袋中央公園に行った。そして東條英機が葬られている雑司が谷霊園に寄った。ただし、遺骨は粉砕され太平洋に投棄されたので墓には無い。


      背負ひたる籠の猫鳴く師走かな
      墓ひとつ探して踏める落葉かな
      

  日だまりに鳩のあまたがうづくまり何を思へる朝の公園
  朝の日に照らされてあり巣鴨プリズン跡の公園
  サンシャインビル


  碑の前に飾りてあればもの思ふたかが日の丸されど日の丸
  ありし日の巣鴨プリズンしのぶがに人影が立つ心霊スポット
  夜な夜なをさまよふ人のありといふ巣鴨プリズン処刑場跡
  天皇に直結したる軍隊を野放しにせり統帥権
  石油なき国の行末うれふると負けを覚悟の戦始めき
  それぞれの信をつらぬきゆづらざり武力をもてる軍が押しきる
  すめろぎの願ひとたがふ結論を上奏しつつ慟哭したり
  国民の意志となしたる結論にすめろぎが出す開戦の勅
  ヘッドホン耳に当てたる東條が聞きてうなづく」
  「デス・バイ・ハンギング」


  メモあまた書き残したり行く末を弥陀に託せる和歌の数々
  判決後ひと月あまり 真夜中に呼ばれて立ちし絞首刑台
  東條に信をおきにし天皇の思ひはむなし靖国の杜
  戦犯を神と祀れるこの国を許さざりけり隣国の人
  たましひの休まる場所もなかりけり墓を見つけてカメラ」
  入りくる


  戦犯の墓をさがしてさまよへるわが身疎まし霜溶くる朝
  墓地に立つ木々の梢に烏きて供物探せりバサと下りくる
  枯れし花投げすててあり墓うらは人目とどかず落葉たまれり
  わが影を映す瀟洒な黒石に「竹久夢二を埋む」とありき
  東條の墓はいづことさまよへばまなかひ白きサンシャインビル
  御鷹部屋敷地の松は残りたり朝たもとほる雑司が谷墓地