天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

還暦の象

「古志」2009年1月号

 明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしく。

 長谷川櫂主宰の「古志」2009年1月号に掲載された30句競詠からわが作品を以下にご紹介しよう。題して「還暦の象」。


      秋立つや野山をはしる雲の影
      サルビアの赤に染まれる雀かな
      海浜のサーカステント天高し
      通り雨過ぎてふたたび盆踊り
      還暦の象たゆたへる残暑かな
      もみぢ散る田村俊子の墓とのみ
      朝光やふくら雀の胸白き
      冬潮の毛羽立つかなた不二の峰
      自刃せし矢倉の闇や笹子鳴く
      浮寝鳥真水潮水こだはらぬ
      水仙のこぼせる朝の光かな
      粉雪にいささむら竹鳴りにけり
      巫女が売る破魔矢鏑矢楠の杜
      探梅の径に人寄せ小鳥笛
      あらたまのひもろぎの杜巫女が舞ふ
      松の内七福神をめぐりけり
      初春や若宮大路を人力車
      読経聞く東身延の初えびす
      遊行寺の骨董市は花の中
      菜の花や朝日に伸ぶる人の影
      ひさかたの春日まぶしき象舎かな
      安土城春の雪ふる天守
      立春破邪顕正の弓弦鳴り
      下曽我の女太鼓や梅の花 
      ゆく雲の奥に白雲梅雨の空
      塔頭のもてなしお茶と桔梗かな
      江ノ電の窓に追突油蝉
      ヤンママのつくりし浴衣一歳児
      産院の奥に寺あり夏木立
      葛餅は咽喉に詰まらず観世音


また、古志同人「歳旦帳」のわが一句は次のもの。

      腰越に朝日子待つや初御空