花と阿修羅と
桜の上野公園に興福寺創建1300年記念の「国宝・阿修羅展」を見に行ってきた。国宝・八部衆像、国宝・十大弟子像が主体である。阿修羅には、昔、現地の奈良興福寺で出逢っているので久しぶりとなる。その時は見学者も少なく心ゆくまで見ていたが、今回は見学者でごったがえして落ち着かなかった。
八部咲きの桜の下には、小雨の中にシートを敷いて、花見に興じている人達と夜桜のための席とりが寒々と坐っていた。
花にほふ上野の山の阿修羅像
春雨にものみなけぶる憂ひ顔柳あをめる多摩川を越ゆ
乾闥婆・迦楼羅・緊那羅・五部浄に沙羯羅・畢婆迦羅・鳩槃荼・阿修羅
迦旃延・羅睺羅・舎利弗・目犍連・富楼那・須菩提 十弟子の内
さまざまの悩みを持てる阿修羅なれ六本の手のやりばなかりき
顔三つ手は六本の阿修羅像こころの奥の自分に出会ふ
童顔の沙羯羅の頭上くちなはがとぐろを巻けり尾は胸に垂る
ありがたき薬師如来に観客は印をむすべる手をまねてをり
乾闥婆は頭に獅子の被りもの眉をひそめて瞑目したり
つくづくと阿修羅見つめて動かざり時計回りの観客の列
ミサイルのとぶ空を見る阿修羅像怒りにきざす悲しみの色
席取りの青きシートが雨に濡る上野の山の花八分咲き