天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

かたくりの里

相模原市城山にて

 かたくりの里は、相模原市城山にある。例年開花期のこの時期に見に出かけている。但し、黄花かたくりは、10日ばかり遅れて咲く。このカタクリユリ科多年草で、古名は堅香子(かたかご)。昔は地下の鱗茎から片栗粉をとった。ちなみに、現在はジャガイモやさつま芋からとる。この根の鱗片が栗の片割れに似ていることから「片栗」の字があてられた。  
 和歌では、大伴家持のあまりに有名な次の歌に止めを刺す。毎年あげている。


  もののふの八十(やそ)少女(をとめ)らが汲みまがふ
  寺井の上の堅香子の花             大伴家持
                         
  星がたのかたくりの花咲き闌けて尖たわみ反る空へ還ると
                         上田三四二
  芽ぶき待つ雑木林の奥処までむらさきを敷くかたくりの花
                         川辺古一

      かたくりのからりと晴れし風の墓地   行方寅次郎
      かたくりの花すぐゆれて谷谺      飯塚田鶴子


  吹きおろす風のなすままそよぎけり丘のなだりのカタクリの花
  吹ききたる風に真向ふカタクリはナースキャップのふかるる
  ごとし


  かたくりの花咲く丘をたもとほる平日なれば老人の群
  花の色いろいろあれどミツマタはみな三叉に枝分かれせり
  かたくりの花盛りなる丘の辺に咲き疲れたる猩々袴