天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

躑躅の季節

大磯湘南平にて

 つつじヶ丘という地名は、日本のあちこちにあるようだ。五月ともなると躑躅の花で目立つ丘陵があれば、この名前がつけられたのだろう。躑躅は、ツツジツツジ属の常緑または落葉低木の通称で、種類は多い。


    躑躅わけ親仔の馬が牧に来る      水原秋桜子
    ついついとつつじの雌蕋残りたる    高野素十
    須磨の山源平躑躅咲きにけり      森谷怒愛庵


万葉集では九首(長歌四、短歌五)に詠まれている。白花(しらつつじ)、赤花(につつじ)が出てくる。美女の形容にもなる。以下に短歌五首をあげておく。


  水伝ふ磯の浦廻(うらみ)の石上つつじ茂く開く道をまた見なむかも
  風早の美保の浦廻の白つつじ見れどもさぶし亡き人思へば
  山越えて遠津の浜の石つつじわが来るまでに含みてあり待て
  細領巾(たくひれ)の鷺坂山の白躑躅われににほはね妹に示さむ
  女郎花咲く野に生ふる白つつじ知らぬこともて言はれしわが背