天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

栃の木

ベニバナトチノキ(足利フラワーハ

 橡とも書く。トチノキ科の落葉高木。高さは30メートルにもなる。五月から六月に若枝の先に円錐花序を出し、紅色を帯びた四弁の花を多数開く。十月ころに熟する実は裂けて、栗に似た種子を出す。これをさらせば食用になる。


  橡の太樹をいま吹きとほる五月かぜ嫩葉たふとく
  諸(もろ)向(む)きにけり       斎藤茂吉
                      
  とちの芽のものものしくも粘液を吐けるを愛す
  坂の夕日に             鹿児島寿蔵
                      
  しづかなる若葉のひまに立房(たちぶさ)の橡の花さきて
  心つつまし             佐藤佐太郎
                      
  たましひのやうやく休息(やす)むときを得て千の掌(て)の
  葉を捨てし栃の樹          斎藤 史