天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

病院(1)

杏林大学医学部付属病院にて

 医療法により、患者20人以上収容するものを病院、19人以下を診療所とする。100人以上を収容し、診療科中に、内科、外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科を含むものを総合病院といい、各種検査室、病理解剖室、研究室、講義室、図書室などを整備することが規定されている。


  待ちあぐむ村の医院の硝子戸に映れる冬木みな歪みたり
                    中島哀浪
  窓の空晴々広し古き名の根岸の里の病院にこもる
                    植松壽樹
  生きている不潔とむすぶたびに切れついに何本の手は
  なくすとも             岸上大作


  空洞を星の如くに大事がり少年らねむる夜の市立病院
                    浜田 到
  何時の日のわれも僥倖など持たず病院に来て湿りし靴ぬぐ
                   中城ふみ子
  みじめなる吾の姿か病院の廊下を片足ひきてわがゆく
                    五味保義
  運ばれて院内ゆけばしばしばも荷物のごとき人を相見る
                   佐藤佐太郎
  病棟に世をば隔つる思ひして見あぐれば行く秋の白雲
                    葛原 繁
  身うごきの出来ざる人を養ひてこの病院の人みなやさし
                  長谷川ゆりえ
  カロリーを計られてくる食膳のメロンに濡れて五月のひかり
                    上野久雄