天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

風薫る

湘南平にて

 三寒四温の季節とは言うものの、今年は格別に気候が不順である。半袖で野球観戦していたかと思うと、翌日には雪が降ってオーバーを着こむ、といった調子。世界的にも、火山の噴火、大地震発生など、尋常ではない。地球温暖化の影響という尤もらしい解説が出ていたりするが、そんなレベルでなく、地球の長期変動や太陽系の周期変動の中に位置づけられるのではないか。
 でも、晴れた日の山野は、まさに風薫るの風情で気持がよい。


  橡(とち)の太樹(ふとき)をいま吹きとほる五月(さつき)かぜ
  嫩葉(わかば)たふとく諸(もろ)向きにけり  斎藤茂吉
                       
  愛恋のたはやすきかなわがうでに抱きしめたるは若葉風のみ
                       塚本邦雄
  透明のガラスのこちら吹かれずに風を見ている五月の風を
                       福島泰樹

藤の花はまだかと大磯から湘南平を歩いた。藤はまだ花房が出ておらず、どこにも色を見つけることは出来なかった。


    初蝶の後追ひかくる鳩の朝
    初蝶や錆びし鉄路の果て見えず
    ぬかるみに散りて色さす山桜
    春ふかみ雲に紛るる富士の峰
    風かをる鳥の囀りみづみづし