天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

糸瓜(へちま)忌

Copyright 坂の上の雲マニアックス

 正岡子規は、明治35年9月19日の未明に亡くなった。前日に糸瓜を詠んだ次の辞世三句は、よく知られている。


     糸瓜咲て痰のつまりし仏かな
     痰一斗糸瓜の水も間にあはず
     をととひのへちまの水も取らざりき


よって俳句の歳時記では、9月19日を糸瓜忌とする。今年は日曜日であった。
 子規は日本にベースボールが導入された初期の頃の熱心な選手(捕手をつとめた)であった。そして日本の野球用語は、子規によって基礎ができた。こうした功績により子規は平成14年に、野球殿堂入りとなった。
 今の時期、米国のMLBでも日本のプロ野球でも、優勝争いや記録争いが盛んで、テレビから目を離せない。


     鉄柵を乗り越え出でし葛の花
     卒塔婆の文字に年古るつくつく師
     念仏にすぼみてちりぬ白むくげ
     糸瓜忌や骨董市の遊行寺
     糸瓜忌や二百安打へあと七本


  水通す白きパイプに胸反らし朝日にむかふ三羽鵜の鳥
  にごりたる放生池の水面に水銀色(みづがねいろ)の尾鰭ゆれたり
  宇賀神の池にわたせる鉄線と簾が守る金魚、色鯉
  朝がきてつくつく法師鳴きはじむ鬼鹿毛之墓照手姫之墓
  イチローは二百安打へあと七本テレビ見ていた糸瓜忌の昼


[注1]イチロウではなくイチローが正しい、正確に書かないと失礼
    になる。短歌人会・東京歌会での蒔田さくら子さんの御指摘
    である。ところで、彼の本名は、鈴木一朗〈すずき いちろう、
    スズキ イチロウ〉であり、日本語のふりがなからすると、
    イチロウになるはずだが、選手名(芸名)としては、イチロー
    と登録された。ついでに人名について注意すべきは、正字
    漢字を使っている場合である(例えば、沢ではなく澤)。
[注2]右上の画像は、Copyright © 2004- 2010 坂の上の雲
    マニアックス All Rights Reserved から引用した。