晩夏の湖畔
湖とは、広辞苑によると、水海の意味で、周囲を陸地で囲まれ、直接海と連絡のない静止した水塊。普通は中央部が沿岸植物の侵入を許さない程度の深度(5メートル以上)をもつもの、とある。現代歌人も湖をよく詠んでいるが、冬の情景が多いように感じる。今の時期の歌が見当らない。というわけでもないが、近くの鎌倉湖に出かけた。もともとは農業用の溜池として人工的に作られたのだが、湖の名をつけている。広辞苑の定義には当てはまるのだろう。
アメンボの競泳を見る小川かな
隠沼(こもりぬ)にとめどなかりし蝉しぐれ
新しき墓つぎつぎに立ちたれば湖畔の墓地はやや傾けり
アメンボのスケート競技見てゐたり谷戸の小川の早き流れに
湖底よりうかびきたれる色鯉が朝の水面に大き口開く
金色の魚体ゆらせて遊弋す朝日差し入る眼下の湖面
せり出せる木に隠れたる水面に蟲の落つるを待つ山の魚
逝く夏の暑さもどれと湖にみんみん蝉の声のひびかふ