天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

芋掘り

横浜市舞岡にて

 薩摩芋はもとは熱帯アメリカ原産のヒルガオ科多年生作物。十七世紀ころ渡来し、十八世紀に普及した。飢饉や食糧難を救ってきた。甘藷、藷(いも)、唐芋とも言う。近郊の農家では、秋になると薩摩芋畑を有料で芋掘りとして解放する。家族連れに人気がある。


     ほの赤く掘起しけり薩摩芋    村上鬼城
     藷掘りを猿が見に来る岬かな   須原正三


  朝に食べゆふべに食べて我が畑に生(な)りしことしの
  甘藷の美(うま)さは          峯村国一


  この糧(かて)を得ねば飢ゑ死ぬ人の背に藷は石より
  重たかりけり             福田栄一


  まだ腐りてをらぬと言ひて押入より取りだす甘藷縁に
  ならぶる               清水房雄


  夜満時(よみつどき)をさつまいも食ぶ紅小町べにあづま
  など名もゆかしくて          松平盟子


  かつての日食したと言う芋づるを後に投げて芋掘る
  われら                中森武子


  藷を埋め枯葉燃やして過ぐす午後死にそなふるは少し
  さきのこと              後藤直


     芋掘りの子は小さきをよろこべり