天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

虹鱒

忍野八海にて

 サケ科の魚。北米西部が原産地。わが国には1877年以来数回移植され、今では各地に棲んでおり、米国に輸出されるほどに普及している。


  腹すこしあかき紅鱒ほそぼそと蒪菜の上を
  わたりてゆくも           前田夕暮


  音たてて浅瀬をのぼる鱒の群ひそけきものか山
  ふかくして             松田常憲


  つつましくこころにさやる山水にすみつく鱒をみて
  ゐたりけり             酒井廣治


  ぱちぱちとはねをる鱒を舟子らはむごたらしくもうち
  殺したり              暁鳥 敏


  虹鱒の紅のくれなゐひらめけば無慙(むざん)に蒼き
  山川の水              吉植庄亮


  虹鱒の虹のうろこを焼くに馴れ塩壺の塩砂より乾く
                    斎藤 史
  虹鱒の腹をしぼりて真(ま)珠なす卵を採るも春の
  慣ひぞ               田谷 鋭