天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

氷柱

富士の氷穴(テレビ画像より)

 古文では「つらら」と言えば、「こおり」を意味した。今日の「つらら」は「垂氷(たるひ)」といった。和歌でその例を見てみよう。


  たちぬるる山のしづくもおとたえて槙の下葉に
  たるひしにけり     新古今集守覚法親王


  朝日さす軒ばの雪はかつきえてたるひのすゑに
  おつる玉水     風雅和歌集・前大僧正道意


  つつ井づのゐづつのたるひとけぬまにほどなくくるる
  冬のかげかな      夫木和歌抄・藤原定家


  難波がたよせくる波に風さえてあしのかれ葉にたるひ
  しにけり        夫木和歌抄・源 通親


  夕暮のみぞれにしみやとぢぬらんたるひづたひにしづく
  おつなり        夫木和歌抄・源 兼昌


  谷の庵にたまのすだれをかけましやすがるたるひの
  のきをとぢずは         山家集西行


現代俳句の例を以下に。

     みちのくの町はいぶせき氷柱かな   山口青邨
     みちのくの星入り氷柱われに呉れよ  鷹羽狩行
     大つらら数多の虹を蔵しける     川崎展宏


     身延山柄杓につらら垂れてをり