天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー野菜(2/3)

  ほつりほつり落花生の実をはみながら子供のことを思うてはゐる

                      前田夕暮

  とろとろに摩られし豆がつづけざまに石臼より白くしたたりにけり

                     佐藤佐太郎

  蚕豆(そらまめ)を皿に弾(は)じきて新しき季節を喰(く)らふこの簡素はも

                      吉植庄亮

*蚕豆は、マメ科一年草または越年草で、地中海、西南アジアが原産地らしい。秋に種をまいて翌年の五月ころから収穫する。塩茹でにするか、莢ごと焼いて、中のマメをそのまま食べる。

 

  来む夏はわが手につくり花も見む莢(さや)豌豆(えんどう)の莢のたべごろ

                       岡 麓

  豆煎(い)れば豆ひそやかにつぶやけり未来(さき)の世も同じこほろぎの声

                      斎藤 史

*下句が豆のつぶやいた内容と解釈するか。

 

  ゆふあへの胡瓜もみ瓜 醋(す)にひでて まだしき味を喜びまほる

                      釈 迢空

*なんともややこしく古い言葉遣いで分かりにくい。胡瓜と瓜を揉んで和え、酢の物にするという。そのまだ未熟な味を喜んで賞味する、という内容であろう。

 

  庭畑にもぎし胡瓜をはりはりと齧りつつ朝の息をととのふ

                      木俣 修

 

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蚕豆