鯨
古くは勇魚(いさな)と言った。クジラ目に属する水生哺乳類の総称。イルカとの間に分類学的な違いはなく、単に体長の違いである。即ち、5m以上の大型のものをクジラという。大まかに分類すると、
ヒゲクジラ類: シロナガスクジラ、ナガスクジラ、イワシクジラ、
ザトウクジラ、ミンククジラ、セミクジラ、
コクジラ 等
ハクジラ類: マッコウクジラ、アカボウクジラ、ツチクジラ、
オオギハクジラ、シャチ、オキゴンドウ、
その他イルカ類 等
水面に浮かび上がってきて呼吸する間隔は、普通5〜15分だが、2000m以上の深海までもぐるマッコウクジラなどでは、1時間くらいになるという。
日本の捕鯨は、8000年前の縄文前期にまで遡る。捕鯨が盛んであった地域は、紀州、土佐、房州など。万葉集には、「いさなとり」の読みで14首(うち短歌一首)に出て来る。俳句では、冬の季語。
白浜や紀の国人とみる鯨 久米三汀
鯨来る土佐の海なり凪ぎわたり 今井千鶴子
雲かかるわたのみ中にあらしほを雨とふらせて鯨うかべり
加納諸平
大海は広くしありけりむれ鯨潮高吹きゆたに遊べる
石榑千亦
白衣着て駆けあがり来し屋上に空飛ぶ鯨をわれは思ひき
喜多昭夫
わたのはらしづかにありてきこえこしこゑはくぢらの子を
よべるこゑ 森岡貞香
四十トンあまりの鯨つぎつぎに跳びたる海はしばらくゆらぐ
秋葉四郎
前世は鯨 春の日子と並び青空につぎつぎ吹くしゃぼん玉
佐佐木幸綱
さらば象さらば抹香鯨たち酔いて歌えど日は高きかも
佐佐木幸綱
ほろびつつ水半球をゆく鯨しづかなる火を曳きて泳げり
高野公彦
解体の途中に引き出す子クジラはまだ生きていて身を
躍らせぬ 大島史洋