天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

河馬

富士サファリパークにて

 偶蹄目カバ科。サハラ以南のアフリカに分布する。日中は水の中で過ごし、夜になると陸に上がって草を食べる。体重は2トンから3トンにもなる。一腹一子。皮膚から赤い粘液を分泌するので、血の汗を出すといわれる。


  ぽつかりと水に浮きゐる河馬の顔郷愁(ノスタルヂア)も
  知らぬげに見ゆ            中島 敦


  この河馬にも機嫌不機嫌ありといへばをかしけれども
  なにか笑へず             中島 敦


  河馬の子と生れきたりて怪しまじ親とならべる河馬の子
  の顔                 橋本徳寿


  うち揺れつつ塵芥(ごみ)まぜかへす濁り水河馬は沈みゐて
  そことし知れず            野村 清


  河馬に罰下る日なけん逆説は口腔赤き欠伸(あくび)の深さ
                    佐佐木幸綱
  水面にまず背骨からもりあがり目が出て鼻が出て河馬になる
                     沖ななも
  水辺より上がりしばかりの河馬一頭どた靴のやうに陽を
  浴びてゐる              井辻朱美