天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

茄子

横浜市東俣野の田園にて

ナス、ナスビ。インド原産のナス科の一年草。実の色は通常は黒紫色だが白、黄、緑などもある。日本へは中国を経て8世紀頃に渡来した。形には丸ナス、卵形ナス、長ナスなどがある。くりぬいたナスの中にシギの肉を入れて焼いた鴫焼きは美味しいというが、鴫を捕ってよいものかどうか。めったに食べられない料理だろう。


     うれしさよ鬼灯ほどに初茄子      涼莬
     生きて世にひとの年忌や初茄子     几菫
     長茄子のどこまで伸びてゆくことか  川崎展宏


  紺の茄子掌にのせてゐる夕雲のあらしに迅き空と知りつつ
                     河野愛子
  秋の歯にぷつり噛み切る茄子の膚 魂(たませ)よ魂紺色深き
                     日高尭子
  ひかり沁む朝の舗道にうつくしき茄子落ちてあり霹靂のごと
                     安立スハル


「秋茄子は嫁に食わすな」という慣用句がある。現在では「嫁に食わすにはもったいないほど旨い」という意味にとられているが、もとは次の和歌からきた。


  秋なすび早酒(わささ)の粕につきまぜて棚におくとも嫁に食はすな


ここで嫁とは、「嫁が君」で鼠のこと。早酒(わささ)の粕につけた秋茄子の漬物は、まことに美味しそう。