天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

茄子

横浜市東俣野の田園にて

 インド原産のナス科一年生の野菜。中国を経て渡来した。丸ナス、卵形ナス、長ナスなど多くの品種がある。焼く、煮る、揚げる、漬物にする など料理法も多様。


  ちひさなる茄子は紫紺を盗みをり十大弟子の袈裟の色より
                      葛原妙子
  しんかんと七月いたり母がため茄子もてつくるむらさきの馬
                      塚本邦雄
  ことばみだれみだるる今日のかたみとて茄子一籃(ひとかご)の
  おそろしき藍              塚本邦雄

  ゆうぐれに澄む茄子畑かなしみのしずくとなりて茄子たれており
                      玉井清弘
  こんなにも秋茄子の色冴えてゐる世にいま何が新しいと言ふ
                      今野寿美


たまたま今読んでいる川井怜子さん(「短歌人」所属)の新刊歌集『メチレンブルーの羊』に、以下のような茄子の歌が出ている。日常感覚のリアリティ。

  耕やしし深さが足らぬ愛が足らぬいびつな茄子の二つが下る
  冷蔵庫にトマトは腐る大切の時間をラップできつちり包まう
  九月六日月曜日午後三時よりスーパーいなげ屋の茄子詰め放題