天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

冷蔵庫

わが家の台所から

 日本では1907年ころに家庭用の氷冷蔵庫が発売され、1960年代まで使われた。ここから氷庫という呼び名も出た。広く普及し始めるのは電気冷蔵庫が出てからである。冷凍室も付いてからは、冷凍食品が家庭用に売られるようになった。


  かすかなる顫音起る血清と葡萄を詰めし夜の氷庫より
                    葛原妙子
  夜半開く冷蔵庫の中一本のけものの白き乳凍りゐつ
                   富小路禎子
  冷蔵庫内に霜ふり錘形(すゐけい)の死の睡りもて
  熟るる苔桃             塚本邦雄


  冷蔵庫の奥に生みためてあるごとき発光の卵(らん)
  数へてゐたる            河野愛子


  冷蔵庫あけたる寸の隙間よりはかなく白き息立ちにけり
                    濱口忍翁
  冷蔵庫の奥の方にあるでせう昨日までの嘘のかたまり
                   久保田幸枝
  たましいを預けるように梨を置く冷蔵庫あさく闇を
  ふふみて              島田幸典


  秋霊はひそと来てをり晨ひらく冷蔵庫の卵のかげに
                   小島ゆかり