天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー水、お茶、コーヒー(1/6)

 酒類についてはすでに取り上げているので、ここでは省略する。

水は生命の根源である。古代中国の五行説では、万物は木・火・土・金・水の5種類の元素から成るとされた。

 

  鈴が音(ね)の早馬(はゆま)駅家(うまや)の堤(つつみ)井(ゐ)の水をたまへな

  妹(いも)が直手(ただて)よ      万葉集・作者未詳

*「鈴の音がする早馬の駅家の堤井(つつみゐ)の水をいただきたいものだな。彼女が直接掬ってくれるその水を。」

 

  夏の夜の月まつほどの手すさびに岩もる清水いくむすびしつ

                   金葉集・藤原基俊

*「夏の夜の月の出を待つ間の手なぐさみに、岩間から漏れて流れてくる清水を何度も手ですくったことだ。」

 

  水むすぶよりも猶すずしきは氷室(ひむろ)にむかふ杉の下かげ

                   玉葉集・賀茂経久

*氷室: 氷や雪を貯蔵することで冷温貯蔵庫として機能する専用施設のこと。古代より世界各地で利用されてきた。(フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』より)

 

  水ものまず飯も食はずて真裸に痩せて炎(えん)口(く)の泣き居る処

                       斎藤茂吉

  鉄くさき水嚥みくだし夜のおもひつまづくごとく薬包紙揉む

                       滝沢 亘

 

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氷室 (WEBから)