天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

新春の長谷

鎌倉・高徳院にて

 正月の三が日過ぎてから風邪を引いてしまった。咳がひどく寒気に震えた。医者にかからなくて済んだが、近年にない経験であった。例年、インフルエンザの予防注射をしているので、こうした風邪とは無縁だったのだが。薬を飲んで楽になったので、新春の長谷を歩いた。極楽寺成就院、御霊神社、長谷寺、光則寺、高徳院鎌倉大仏)と辿った。極楽寺では水仙の花、長谷寺では冬桜、光則寺では侘助と素心蝋梅に出会えた。長谷寺では福寿草を期待したのだが、今年は見かけなかった。


     初春の朝日まぶしき凪の海
     大石の製薬鉢や薄氷
     千服の茶臼に散れり寒椿
     水仙の庭がはなやぐ極楽寺
     み仏の罅を気遣ふ初御空
     み仏の胎内に入る長谷の春
     初雁とふ侘助椿谷戸の寺
     大寒の山門を入る四十雀
     初春や蛸せんべいに人並ぶ


  土牢に閉ぢ込められしもものふの氏名記せる石碑立ちたり
  大いなる歌碑立てられて鎮もれり与謝野晶子と金子薫園
  罅割れしみ仏の顔仰ぎ見る空青澄める初春の朝
  み仏の頭を汚したる鳩の群手合はす人を見下してをり
  頬に罅割れ頭に鳩の糞初春の大仏なれば更に尊き


 新聞によると、この大仏が東南側に傾いていることがわかり、免震対策が急務という。調査・検討中だが、この秋から改修が始まるかもしれないとのこと。
 建立が始まったのは建長4年(1252)とされ、大仏殿の中に納まっていたが、明応7年(1498)の大地震による津波が、ここまで達して露座になったと伝えられている。