天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

三月の鎌倉長谷

深山含笑(長谷寺にて)

 梅の花は散ったが染井吉野の花はまだ先のこと。辛夷木蓮の花が目当てになる。いつものように極楽寺成就院、権五郎神社(御霊神社)、長谷寺、光則寺と歩いて見た。御霊神社のとなりの家の庭に紫木蓮の大木があり、大きな花をいっぱいに着けていた。しばらくは何の花か分らなかったが、白木蓮を見た後で納得。長谷寺では珍しい花に出逢った。深山含笑(みやまがんしょう)、黄梅、団扇の木の花、ムスカリ など。少し註釈しておこう。
深山含笑は、中国原産のモクレンオガタマノキ属の常緑高木。団扇の木は、朝鮮半島の中北部が原産のモクセイ科ウチワノキ属の落葉低木。わが国へは昭和のはじめに渡来した。ムスカリは球根植物で、原産地は南西アジアや地中海沿岸地方。
昼食には久しぶりに浅羽屋で、生冷酒に刺身盛り合せと鰻丼をとった。


     青空を際立たせたり白木蓮
     江ノ電に触れんばかりや花辛夷
     さくらまだ固きつぼみの極楽寺
     巳が影を見つめて揺るる韮の花
     春風の地蔵にふたつ子生石(こうみいし)
     御霊神社となりの庭に紫木蓮
     口開けて青空吸ふか紫木蓮
     手玉石春風分かつ袂石
     金髪が寒緋桜の下に佇つ
     坂東のお遍路けふは鎌倉に
     観音にそれぞれねがふ遍路衆
     ひよの来て寒緋桜にぶらさがる
     土佐水木弁天窟が口を開く
     弁天窟出づればにほふ木瓜の花
     黄梅は長谷観音のかがやきに
     写経場垣根の外に団扇の木


  成就院河口慧海が招来の小さき仏を縁側に置く
  蓋したる星月の井のかたはらにその由来読む極楽寺
  咲き方は白木蓮とことなれり東司のそばの深山含笑
  蕊の色白木蓮とことなるも白き花咲く深山含笑
  行時山いただきに群れ白く咲く幹太き樹の木蓮の花
  中トロのまぐろ刺身に吟醸酒お新香そへて鰻どんぶり