天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

立秋の長谷

鎌倉・長谷寺にて

 日本列島を台風が襲った。立秋の日に天気が良かったのは、関東地方だけだったようだ。紫陽花の時期を過ぎた鎌倉長谷では、芙蓉、蓮、百日紅が目についた。長谷寺の境内は模様替えしている。立派な写経場が出来上がり枯山水の庭がある。従来の二カ所の写経場には、弁財天、大黒天が置かれてあった。いつもの散策ルートの極楽寺成就院、御霊神社、長谷寺とたどったところで、大粒の雨が降ってきたので、光則寺に寄るのをあきらめて早々に帰路についた。


     立秋遊行寺坂のとどこほる
     泡とばす洗車の水の涼やかに
     門前に醉芙蓉揺れ極楽寺
     みんみんのこゑに鎮まる極楽寺
     極楽寺大手ひろぐる百日紅
     ヤマガラや龍の吐く水飲みにくる
     立秋や力餅屋に求肥買ふ
     醉芙蓉久米三汀に寄りかかる
     梵鐘に風の音の歌百日紅
     蝉鳴くや枯山水の写経場


  南洋に台風奔り鎌倉の七里ガ浜は泥巻ける波
  力石とおぼしき石が極楽寺茶臼の元にふたつ見えたり
  紫陽花の時を過ぎにし長谷寺はみんみん蝉がわが世と啼けり


 長谷寺の鐘楼の傍の百日紅が咲き始めた。ここに来るたびに、梵鐘に彫られている次の歌を思う。

  風の音(と)の遠き未来を輝きてうち渡るなり鐘の響きは
                    佐佐木幸綱