天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蛸(続)

江ノ島水族館にて

 2010年4月29日の続きである。ウツボの天敵が蛸であることを知る人はどれくらいいるだろうか。ウツボと蛸が同じくらいの大きさか、蛸の方が大きい場合は、蛸が必ずウツボをやっつけてしまうという。蛸の戦術は「肉を切らせて骨を断つ」である。つまり、蛸は足の一本に誘いの隙をウツボに見せて咬みつかせ、他の足でウツボの首を絞めて殺すのである。なお、蛸が小さいとウツボは好んで蛸を食べる。
 以上のことは、末広恭雄『魚の博物事典』からの知識である。


     石女(うまずめ)の蛸追(おひ)うつや芋ばたけ
                      与謝蕪村


  よろこびの失はれたる海ふかく足閉ぢて章魚の類は凍らむ
                      中城ふみ子
  飯蛸の死に方ひとつつまみあげ今日の酒ののみ方
                      高瀬一誌
  無造作にみえるが蛸の八本は計画通りでかつ真面目であろう
                      高瀬一誌
  腹がへれば本当に自分で食べてしまふその蛸の足人間が食ふ
                      吉野昌夫
  海の生き物って考えてることがわかんないのが多い、蛸ほか
                      穂村 弘
  また一本足を切られてかたはらの生簀にぽしよりとかへされし蛸
                      植松法子