天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

北鎌倉の紅葉

円覚寺にて

 藤沢・遊行寺境内の大銀杏が完全に黄葉したので、北鎌倉の紅葉はいかにと、円覚寺東慶寺に行ってみた。いずれも満足のいく状態だけに、観光客で混み合っていた。風の強い日で、円覚寺裏山の紅葉はみな裏返っていた。あまり見かけない風景なので感動した。
 円覚寺の入口で貰った入場券の裏に「禅のこころ」―総力をあげてーに面白い事が書いてあった。即ち、60兆ある私たちの細胞はみな生きようとしている。その働きこそが仏様なのだ、と説く。死にたいと思う時は、この真実を考えてみよう。そんな趣旨であった。


     全山のもみぢは風に裏返り
     紅葉のうらは浄土の明りかな
     鎌倉や風強き日のもみぢ狩


  裏山のもみぢは風にうらがへり黄白色の波としうねる
  石階の空をいろどる紅葉に見とれて人の流れとどまる
  参道に添ふ紅葉を見上ぐれば葉裏にひそむ浄土の光り
  もみぢせる大き公孫樹は竹林の小暗き上にそびえてゐたり
  竹林の清しき中に黄葉のかがよふが見ゆ東慶寺墓地