天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

円覚寺の秋

円覚寺黄梅院にて

北鎌倉の紅葉の具合はどうだろうかと、とりあえず円覚寺に行ってみた。入口山門下のもみじは鮮やかに紅葉しており、観光客がスマホに撮っていた。ただ裏山はみどりがちで、紅葉にはまだ遠い様子。ぶらぶら歩いて開基廟に入り、抹茶を飲むことにした。久しぶりのこと。この庭には昭和八年に魯迅が寄贈した木蓮があり、春になると見事な花をつける。
 次に奥の黄梅院に行き、聖観音を拝した。庭には観音像を彫刻した枯れ木の木片が置かれてあった。黄梅院を辞してから、急な石段を登って洪鐘と弁天堂のある山頂に立った。そこからは下方の東慶寺、遠方の富士山までが見渡せる。東慶寺の銀杏の群は、黄葉し始めていたがまだ見頃にはなっていなかった。
 実は、建長寺句会が例年11月23日に開催されるので、今年は参加するつもりでそこに提出するための三句(「時頼忌」「鎌倉嘱目」)を作ることが今回の外出の目的であったのだが、当日は天気予報どおり、時雨ぎみの寒い日になったので、行くことをあきらめてしまった。


     舎利殿の闇のやはらぐ小春かな
     抹茶待つ小春日和の開基廟
     かたはらに白彼岸花抹茶碗
     落雁をそへて抹茶や時頼忌
     今の世は核もて脅す時頼忌
     線香のけむりはわが身時頼忌
     小春日や朽木に彫れる観世音
     �淪鐘の撞木朽ちたり冬に入る
     墓群にいてふ散るなり東慶寺


  落雁に抹茶をすする開基廟魯迅寄贈の木蓮が立つ



[参考]円覚寺の歴史や境内の紹介は、五木寛之のテレビ番組「百寺巡礼」によくまとまっていた。