天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

紅葉狩―北鎌倉―

北鎌倉明月院にて

 北鎌倉にも紅葉の名所はいくつかある。建長寺・半増坊、明月院円覚寺東慶寺などを巡った。いずれ劣らず見応えがあった。
半増坊参道の入り口にいつの間にか大きな達磨像が設置されているのに驚いた。仏殿では、十二月八日の成道会が、大勢の和尚参加のもと盛大に行われていた。
明月院の境内の紅葉はことの外見事であったが、本堂裏庭の紅葉を見るのに、拝観料の300円とは別に500円を払わなければならなかった。円覚寺では龍隠庵を石段下から見上げるアングルの紅葉が印象深かった。東慶寺の紅葉は墓地に入り込まないと良さが分らない。大きな杉木立を通して見る紅葉は豪華であった。帰りに山門下の喫茶「吉野」に入って珈琲とケーキをとった。


     紅葉のそばの東司や建長寺
     ふり返り見る山門のもみぢかな
     半増坊もみぢちり来る達磨像
     もみぢにも眉動かさぬ達磨かな
     円窓が紅葉を画す明月院
     うさぎ飼ふ明月院の紅葉かな
     御地蔵の青き頭巾や山紅葉
     円窓のもみぢを見むと並びたり
     石蕗の咲く建長興国禅寺かな
     石蕗咲くや読経にめぐる龍の下
     銀杏ちる下に文人画家の墓
     東慶寺墓地のにぎはふ紅葉かな
     茶店窓にながむる枯芒
     茶器の音紅葉芒に囲まれて


  十二月八日は釈迦の成道会和尚集ひて経読みめぐる
  何の木と朱実見上げて騒ぎをり白木蓮とつぶやきて過ぐ
  本堂のうしろの庭は紅葉して炭焼窯が黒き口開く
  見てをればメニューに迷ふ客もありかき揚げ、かけそば、
  ざるそばの店


  待つ列を無視して電車に乗り込める老人見ればひと日
  不愉快


  円覚寺師走に入りてもみぢ散る弓道場に弓弦鳴る音
  納豆巻山牛蒡巻鉄火巻デパ地下に買ふ今日の夕食
  「魔界への誘(いざな)い」といふ芋焼酎飲めば夢見る紅葉の山