天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

時間を詠む(8)

わが懐中時計

 小形の電池ができるとゼンマイ式は衰退した。精度面では、振り子、水晶、電波などの活用が図られてきた。ただそれぞれの歴史をたどることは大変なので、ここでは省略する。詳細はwebの「時計の歴史」に譲りたい。


  圧縮されし時間がゆるくもどりゆくインターチェンジ
  灯の中くだる             高安国世


  花びらの一つ一つは静かなる時間をへだて川面を流る
                     砂田暁子
  光りつつ横ながれして散る竹の葉の竹の時間の限りもあらず
                     河野裕子
  いずれとも交差するなき透明な枇杷の時間がかたわらに逝く
                     源 陽子
  全山紅葉が時間に引きずられるように暮れて行く ぼくを
  残して                中川菊司


  いかほどの時間がたちて地中よりにじみ出でたり紅(べに)の
  茸(きのこ)は             大西民子


  元旦の光なかに物を干し一年という時間へ踏み出す
                     前田康子