時間を詠む(4)
水時計の原理は、容器に水が流入あるいは流出する時の水面の高さの変化で時をはかるものである。わが国の飛鳥奈良時代の水時計を漏刻というが、これは中国に由来する。ちなみに以前に奈良の明日香村に行った時に、『飛鳥水落遺跡』を見たことがある。
次の一首目と二首目は、偶然であるが対になっているような情景である。
待つといふ時間がありて陶酔をするやうな曲が受話器に流る
外塚 喬
長き電話了へて夜へと沈むとき時間のジャバラしづかに縮む
栗木京子
しんどいと訴えてくる少年の背中にどんより時間が曇る
吉村明美
鎮まりし狂気ののちを釣るというたとえば永劫の時間のごとき
馬場あき子
恩寵とうことばはかなしいのちあれば先を急がん時間となりぬ
武川忠一
賜はりし四十日をわれのみの時間に生きて怖れなしとせず
奥村晃作
一定の時間が経つと傾きて溜りし水を吐く竹の筒
奥村晃作
[注]このシリーズの時計の画像は、webにいくつもある「時計の歴史」の記事から借用しています。