時間を詠む(7)
機械式時計は、13世紀後半からイタリアやドイツで作られ始めたという。その動力は錘であった。錘をぶら下げると重力が生まれる。ただこれでは小さな時計にはならない。そこで出てきた動力源がゼンマイである。15世紀後半らしい。これで腕時計が可能になった。
桃色の貝の死にゆく時間見ゆよごれつつ沖に攫はれはじむ
河野愛子
日の当る机上を歩む蟻がゐてしばらくわれと蟻との時間
尾崎佐永子
蛙の時間猿の時間人間の時間など数知れぬ時間がある
宮崎信義
蓄へし時間ひとときに顕たしめて金雀枝(えにしだ)は
黄の花々を垂る 川島喜代詩
空間がかくも時間に統(す)べらるる昨日のさくら明日
(あした)のさくら 津川洋三
あぢさゐのかがやく花鉢透明な時間のなかで溶けてゆくなり
疋田和男
繋がれて雪被りいる笹小舟ひたすら未来へ時間を紡ぐ
秋葉静枝