天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

山下清さん(8/8)

富田林の花火

 昭和46年7月に脳出血が原因で自宅で逝去した。享年49歳であった。夕食時に呟いた「ことしの花火は、どこに行こうか」が、最後の言葉であったという。富士霊園に墓所がある。
 清さんの才能は、発達障害の一種・サヴァン症候群と関係しているらしい。サヴァン症候とは、コミュニケーション障害のある者のうち、ごく特定の分野(記憶力・数学・物理学・パズルなど)に限って、優れた能力を発揮する者の症状を指す。


  警察のよび隊祝ふ花火ありまた戦争が始るのか問ふ 
  夕飯をもらつて花火を見に行つた見る場所きめて腰をおろした
  火でできてゐる花だから花火と言ふ大きくひらき小さくひらき
  大輪の花火七つを見上げたる大観衆を貼絵の中に
  江戸川に両国、長岡、富田林 貼絵になりし花火の記憶
  長岡の花火の貼絵が清さんの代表作のひとつとなりぬ 
  終焉の夕食時に呟きぬ「ことしの花火は、どこに行こうか」


[注]このシリーズでとり上げた画像は、『山下清の放浪地図』(太陽の地図帖 平凡社)から借用しました。