天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

カポックと暮らす

 カポックは、観葉植物のなかでも人気の品種。寒さや乾燥に強く、日陰でも育つ順応型の植物。このカポックの鉢植えの若木を転勤の際に社宅の知人から頂いた。その後何回か住む場所を変えたが、つねに連れてきた。ベランダに置いておく時期もあったが、室内に置くと緑が快いので、以後ずっと居間に置いてきた。ところが年数を経るに従い、背が伸びて天井につっかえるほどになった。樹幹がしなやかなので、幹や枝をまげてなんとか納めている。
 植物とはいえ生命があるので、家族意識の感情が湧いてきて将来の行き先を心配するまでになっている。思い出と現在の気持を以下に詠んでみた。

  転勤の折にもらひしカポックの若木(をさなぎ)いまは成木となる
  鉢に植え居間の片隅に置きたれど枝葉茂りて戸棚を覆ふ
  四十年ともに生き来しカポックは夫婦ふたりの心うるほす
  背がのびて天井にあたま着きたれば幹枝曲げて輪をつくりたり
  引越しのたびに連れ来しカポックは居間に居場所をもらひて静か
  こどもらと共に育ちしカポックは夫婦のもとに残りて暮らす
  夕光(ゆふかげ)の窓辺に立てるカポックは夫婦喧嘩に小枝を落とす
  われら亡きあとのこの木の行く末を思ひてなやむもらひ手ありや
  公園の庭にうつして植ゑたならあと百年はたやすく生きむ
  寒さにも乾きにも強きカポックは棲む土あらば長生きすらし
  のぶ君と名づけて行方見守らむわれら亡くとも伸び伸び生きよ

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わが家のカポック「のぶ君」