天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー道浦母都子『食のうた歳時記』(3/8)

[夏]

  桜桃よ皿にあふれてこぼれたるこのひとつぶの眼(まなこ)恋ほしも

                         小池 光

  あやまちて簗(やな)にのりたるいろくづの白きひかりを人拾ふなり

                         斎藤 史

*簗: 川に竹や網,縄などを水流をさえぎるように張り,中央部に簀棚(すだな)を斜めに設けて泳いでくる魚類を捕獲する雑漁具の一つ。

いろくづ:  魚など、うろこのある生き物。うろくず。

 

  六月はうすずみの界ひと籠に盛られたる枇杷運ばれて行く

                         小中英之

  失恋の<われ>をしばらく刑に処す アイスクリーム断(だ)ちという刑

                         村木道彦

  地下茶房にコーヒーを飲み昼休み動詞「おもふ」の中にわが棲む

                         高野公彦

*下句は「思いにふける」状態を表現したものだが、新たな認識を示された感じがする。

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枇杷