食のうたー道浦母都子『食のうた歳時記』(4/8)
[夏(続)]
角砂糖ガラスの壜に詰めゆくにいかに詰めても隙間が残る
香川ヒサ
*角砂糖を個性の強い人間として、一首を暗喩の歌と理解するのがよいのだろう。
石(いは)麿(まろ)にわれ物申す夏痩に良しといふ物そ鰻取り食(め)せ
*この歌で知られるように、日本で「暑い時期を乗り切るために、栄養価の高いウナギを食べる」という習慣は古代に端を発するとされるが、土用の丑の日に食べる習慣となったのは、安永・天明の頃(1772年 - 1788年)よりの風習であるという(平賀源内が発案したという説あり)。
むつまじく八朔食べてゐる娘(こ)らよ二一世紀はいかなる女
伊東一彦
男はもビールのむとき女はもくちづけのとき目をつむるらし
新しき星抱(いだ)くごとたっぷりと夜に西瓜を抱きて歩く
早川志織
*上句の直喩が斬新。