天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー道浦母都子『食のうた歳時記』(2/8)

[春(続)]

  米洗ふとき丹念に人想ふ言葉湧きゐて解かれがたしも

                         安永蕗子

*「解かれがたしも」は、その状況から抜け出せないことを言う。

 

  そら豆の殻一せいに鳴る夕母につながるわれのソネット

                         寺山修司

ソネット: 十四行詩。ルネサンス期にイタリアで創始され、英語にも取り入れられ、代表的な詩形のひとつとなった。

 この歌では、そら豆の思い出が母とつながっているのだ。一緒に食べたこともあっただろう。

 

  鶏卵を割りて五月の陽のもとへ死をひとつづつ流し出したり

                         栗木京子

  らつきようの玉かがやけるよろこびのごときを水にうたせてをりつ

                         河野愛子

  サキサキとセロリ噛みいてあどけなき汝(なれ)を愛する理由はいらず

                        佐佐木幸綱

 

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らつきよう