天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

住のうたー暮らし(3/5)

   ゆとりある人の如くに切手買ふ列に加はれば梅が香にほふ

                      田谷 鋭

   郵袋は引きずられゆき運ばるる人の言葉のいかにも重し

                     富小路禎子

*郵袋: 「ゆうたい」と読む。郵便物を入れて、郵便局間の輸送に用いる袋。

 

   謎めける黒き封筒まづ開きそこまでは乗せらるるダイレクトメール

                     富小路禎子

*ダイレクトメール(DM): 個人あるいは法人宛に商品案内やカタログを送付する宣伝 の手段、あるいは営業支援の仕組み。

 

   一枚のはがきわづかに書きしのみ夜の時間は早瀬のごとく

                      吉野昌夫

   航空便の紙の薄さを肯ひて肯ひきれぬ虚空(ろら)青かりき

                      藤井幸子

   かの人も現実(うつつ)に在りて暑き空気押し分けて来る葉書一枚

                     花山多佳子

*葉書の内容まで暑苦しい、と感じられる。

 

   春あさき郵便局に来てみれば液体糊がすきとおり立つ

                      大滝和子

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