島を詠む(2/3)
二百十日の雨滝のごとくおちたれば海のただなかに島は濡れぬるる
橋本徳寿
翼張りて鷗とびゆくをち方に又はじめての島見出でつる
石榑千亦
寂しければ首さしのべてわれの見る火山の島は濡れてゐにけり
*作者は火山の島に感動して涙ぐんでいたのだろう。
島の渚に日は照らせれど消しがたき影ひとつ持ちて遊ぶ千鳥は
安田章生
*日の照る島の渚に、千鳥が一羽遊んでいる光景をそのまま詠んだものだが、「消しがたき影」に作者の思いが込められている。
きびしく海ゆそばだつ離れ島小島といふに日は沈みつつ
五味保儀
あわただしき今の世に作(な)す物ならずいにしへの林泉(しま)の大き寂しさ
中村憲吉
*木立や流水・池泉などのある庭園は、あわただしい現代に作るものではないという作者の意見。昔つくられた庭園を眺めての感想であろう。