天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

兄、弟を詠む(3/8)

  この国の忌日つらなる八月になほ忘らえぬ死者よわが兄

                        水沢遥子

  三月ほど逢はねば兄はささいなる用事をもちて職場訪ひくる

                        井上菅

  抽き出しの奥に残されいたりけり兄の春本酢の匂いして

                        浜名理香

  兄の書きし日記を元に書かれたり太宰治の「パンドラの匣

                        木村草弥

*太宰の読者であった木村庄助の病床日記がもとになっている。

 

  一隅に遺品をさむるバッグあり兄を鎮めんと叩くをりふし

                       川島喜代詩

*をりふし: 時々。

 

  憲法の九条護れと学徒兵兄は厳しく一世貫く

                        堀江玲子

  兄ちゃんが隣に坐りすきやきを私の小さな茶碗に入れる

                       池田はるみ

 

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すきやき