天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わからない歌

 角川『短歌』十二月号に、「チョコレート、壺中の天地」と題する岡井隆の一連の歌がのっている。
彼の歌には魅力あるものが多いのだが、さっぱり理解できない作品も同じように多い。固有名詞を使っていると、われわれの知らない事柄が前提になっている可能性があるので、普通の言葉しか使っていない例をこの一連からあげてみる。

A チョコレートが重さと蔭(かげ)をかさねあふさういふ壺の底の
  天地(あめつち)
B 全裸(ぜんら)つてことばの響きさへいやだ 林に入(はい)れば変る
  没日(いりひ)も
C 二百十日は時の暗喩にすぎぬのか偶像を倒し夏ぞすぎたる
D あけたときだけかよふ風どうしても秋でなければならなかつた死

 理解できない原因は措辞にあるはず。A:「さういふ」、B:「も」、C:「偶像」、D:「どうしても」 などであろう。


       燈篭の影を伸ばせる落葉かな
       燈篭の影伸ぶ銀杏落葉の上
       燈篭と銀杏並べる落葉かな
       首伸ばし睥睨したり冬の鷺
  十二月八日きたれば過ぎし日の軍服集ひ敬礼したり
  大東亜戦争当時の兵卒の軍服なるか並びたちたり